先月の「えんの舞in柿傳」おかげさまで無事に終演いたしましたことご報告いたします。

今回も渡部保先生の解説で、皆様にはお楽しみ頂けた事と存じます。

照明はなるべく昔のままに、燭台に灯す蝋燭の光でご覧いただくようにお客様にもご無理をお願いし、何より柿傳様のご協力があって茶室で舞わせていただいております。

和蝋燭は独特の光で陰影濃く映し出し、かなり煤が飛びその乱反射で美しいのですが、お店にはご負担をおかけしてしまうのに残月の間を使わせて頂き有り難いことです。

今回は十回ということで、本行物を舞わせて頂きました。掲載したものはその客席からの様子の画像です。

肉眼ではもう少し暗いと思いますが舞う側から見所の方を見ますと、覗き込んだ水底、海底から見上げた波の様子、陰影が迫りくるように感じられ受け止めて頂くお客様のお顔や呼吸がより強く見えるような気がいたしますので、見所からも揺らぎと濃淡を感じて頂いていると存じました。

また露払いには珠紫さんが「黒髪」を常の形で舞い、衣装をつけた私との見え方の違いもご覧いただけたかとおもいます。

谷崎潤一郎の有名な陰翳礼讃のほか、北斎の娘おえいの描いた夜の籬の様子や、甲斐荘楠音の絵画にも描かれている闇をより感じ、皆様とご一緒に時空のはざまを過ごさせて頂きました。

四月吉日

                                                                    神崎えん